都内の小学校で、キャリア教育授業と「意見の違いと話し合い」のワークショップ

先日、都内の小学校6年生向けに「働くってなんだろう?」というキャリア教育授業と、「意見の違い(対立)と話し合い」を体験するワークショップ を実施いたしました。

この学校では、6年生は一年間をかけてさまざまなキャリア教育授業を受けていくのですが、昨年より私たちのこの授業をそのオープニング授業として位置付けていただいており、身が引き締まる思いです。

また今回は、私から1つ新たな提案をさせていただいており、「意見の違いと話し合い」のワークショップも行いました。意見が対立するという状態に対し、説得や論破、あるいは、我慢や諦めなどではなく、話し合いにより解決や合意を創造する、ということを体験するワークショップです。仕事で、人材育成や組織開発を行っている私自身、その必要性を感じているところでもあり、働く上ではもちろん、学校や日常生活でも役にたつ内容だと思っており、学校側に提案させていただいて実現に至ったものでした。特に、ADR(=代替的紛争解決手段・調停)という紛争解決に携わっている私だからこそ伝えたい内容であったので、今回は短い時間ながらも実現できて嬉しかったです。

せっかくなので、授業の概要を以下にご紹介いたします。

2時限の事業の冒頭では、仲間の行政書士の先生が、行政書士という仕事についてとても楽しく親しみやすい語り口調で講義してくださいました。今年は積極的な子が多く、双方向のやり取りが盛り上がりました。

続いて私より「働くってなんだろう?」と題したキャリア教育授業を行いました。

「働くってどんなイメージ?」と、自分なりのイメージを書いてもらったり、「日本に仕事は何種類ある?」や、「小学生がなりたい職業ランキング」をクイズにして考えてもらったり。その上で、みんなが今知っている職業は世の中にある仕事のほんの一部に過ぎないこと、職業ランキングもたったの6年間でガラリと変わってしまうほど新しい仕事が生まれ続けていることなどを紹介し、今みんなが知っている職業の中にピンとくる仕事がなくても問題ないよ、ということなどをお伝えしました。

さらにアメリカの文系大学生の人気就職先ランキングでは、有名企業や政府に並んでNPO・NGOもランクインしていて、これまでは日本におけるキャリアで企業やNPOが対等に混在することはあまりなかったけれど、今後はそんなキャリア形成も増えてくるであろうこと、今までSDGs的取り組みやNPO・NGOの活動と企業の事業は別軸になっていることが多かったけれど、これからはその境目も少なくなってくるであろうこと、だからこそさまざまなことが仕事になりうること、など、私なりの視点や想いも込めてお伝えしました。

終盤では、自分なりの働く目的を考えてもらい、自分が何をしていると楽しいのかということを大切に、さまざまなことに興味を持ったり世の中に対してアンテナを高く持って、過ごして欲しいことを伝え、最後に、CO2回収技術に魅せられた東大生(当時)として有名な村木風海さんがご両親からもらった言葉をみんなへのメッセージとして添えて、キャリア教育授業は終了しました。その言葉とは「天才にはなるな、天才は努力する秀才には敵わない。でも秀才にもなるな、秀才の努力には限界がある、楽しみ続ける人には敵わない。だからあなたは楽しむ人になりなさい。」子どもたちにもぜひ、追求していくことが楽しくてしようがないような仕事に、ぜひ出会って欲しいなと願っています!

その後「意見の違い(対立)と話し合い」ワークショップを実施しました。

4〜6人のグループに分かれ、「夏休み 1週間の課外活動 どこへ行く?」と題して、グループごとに、「山村」か「漁村」かの2択で、どちらか一方の行き先に決めてもらうようにしました。

グループごとの検討の結果、どちらを選んだかに挙手してもらったところ、山村と漁村を選んだグループは概ね半々くらい(6:4くらいかな?)にわかれていました。その後、どのように決めたのか、という決め方についても発表してもらうと、多数決、俺の意見を通した、あみだくじ、メリットデメリットのプレゼンをしあった、もともと満場一致だった、などなどさまざまな内容が発表されました。

これに対し私の方からは、何かを決めるとき、まずは決め方を決めているよね、そしてその決め方を考える際のヒントとしては「効率と公正」という視点があること、などを易しい言葉に置き換えて伝え、同時に、これらの方法はいずれであっても、勝負に負ける人、少数派、痛み分けなど、常に一定の不満足な人(100%満足ではない人)が出るよね、ということをお伝えしました。

そして全員が満足する結論を見つける方法に「話し合い」というものがあること、話し合いのポイントは「なんで?(その意見なの?)」と、それぞれがその意見に至った理由や経緯、背景の気持ちを丁寧に聞くことにあること、などを伝え、再度、グループ内でメンバー全員がお互いに理由を聞きあって、それらの理由を全てかなえるような、新たな結論を創造できないか、話し合いをしてもらいました。

結果、漁村を選んだ子は水が好きという理由だったから湖に面した山村なら全員満足できそう、や、漁村を選んだ子は美味しい魚が食べたいことが理由だったから美味しい川魚が取れる山村にした、などなど、全員の満足を目指した創造的な解決策を一生懸命に考え出してくれました。

これらはまさに、両当事者の理由や背景の気持ちを聞いて、どうしたら双方の本音の部分が満たせるか、柔軟なアイデア発想で探していく、という、私たち調停人が調停という紛争解決の現場で行なっていることと同じでした。

もちろん、日常生活の中にあっては、常に話し合ってばかりはいられず、じゃんけんや多数決の方が手っ取り早く適当なこともあります。でもそれだけだと、常に不満足の人が一定数出てしまうこと、そして、不満足になる人がいつも同じになってしまう可能性もあること、必要に応じてさまざまな解決方法を選択肢に持っておいて欲しいこと、を伝えてワークショップを終わりました。

今回は、キャリア教育と話し合いのワークショップで、とても盛りだくさんになってしまいましたが、全員を当てて挙げられないほどにたくさん手が挙がったり、個人のワークもグループのワークも一生懸命に取り組んでくれて、終了後に質問や感想を伝えに来てくれたり、お礼を言いにわざわざ玄関まで出て来てくれる子がいたりと、本当に嬉しい気持ちになりました。

これからも、楽しくて心に残る授業を届けていきたい、と思いました!

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